一部で報道されているように、私は今シーズンをもって、BecTeroSasanaを退団します。29日の試合がホーム最終戦となります。最後までこのクラブのために全力を尽くしたいと思います。

こういう場合、必ず理由を述べなくてはいけませんが、お話しするのはいつも難しいです。私の場合、何か一つの理由で決めることはなく、いろんなことが噛み合った結果として決断を下しているのに、限定して話してしまうとそればかりがクローズアップされてしまうからです。

それを覚悟で理由を挙げるとすれば、まずやはり家族の存在がありました。ホームシックとは少し違います。バンコクはとても住みやすい街でしたし、そもそも私はあまり飾り気のない毎日を送るのでどこで生活してもあまり変わらないのだなという発見があったくらいです。敢えて言うなら、ファミリーシックでしょうか、いやこれをホームシックと呼ぶのでしょうか。ただ、二ヶ月に一度、それも数日だけ家族の顔を見てまた旅立つ生活は、私の人生の生き方として正解に思えませんでした。

一年でクラブを離れることに残念な気持ちはあります。いい結果も出て、今ではこのクラブが好きになってしまったし、必要とされている中でノーを言うのは辛いものでした。クラブが最後まであの手この手で引き留めようとしてくれたこと、そして私の選択に理解をしてくれたことに感謝しています。

当初から一年で去ろうと思っていたわけではありません。一年間海外でプレーしてみて、いろんなことがぼんやりと分かってきて、二年目はもっと楽しくなっていくのだろうという実感もありました。しかし、サッカー選手として私に残された時間はそう多くないのです。

この一年である程度のしっかりした結果を示せたことでタイでは想像していた以上の成果と評価を得ることができました。32歳でそのような場所を見つけられたことは幸せなことですが、そこに残ることは私の中で挑戦という側面からは外れてしまうように感じました。

私の中でサッカー選手であるうちは、常により難しいことに挑戦していこうというビジョンがあります。自分にとって目標にもなり得ないほど遠い夢だったサッカー選手という仕事は、最後まで自分を高めてくれる挑戦の舞台にするべきだと思っています。

昨年末、鹿島を離れる時に2つやりたいことがありました。10年間一つのクラブに留まった以上、その後のサイクルが早くなってしまうのは仕方がありません。私はもう一つの挑戦にもまだ体が動く時に走り出したいと考えた時に、今しかないと思いました。

今回も自分の中で納得した決断だったものの、退団が近づいてきて、予想していなかったとても寂しい気持ちがあります。たった一年でこのような気持ちになれたのは、サポーターの皆さんが「なぜここまで私を応援してくれるのか」と不思議に思うほど愛してくださったからだと思います。それにお返しすることが充分にできたかは分かりませんが、最後まで戦い続けることが私にできる最後のメッセージだと思っています。